ろこのかたこと

たまに役者をやる会社員の日常

I wish

 7月に入った。一年の半分が終わった。年々早くなっていくような時間の進みかたに戸惑う。

 2023年の上半期を思い返すと、久々にマスクを外して生活ができるようになった喜びが大きい。もちろん、状況によっては着用するのでマスクケースを携帯するようにしているし、引き続き手洗いうがいなどの感染症対策は欠かさず行っている。だがやはりダイレクトに空気が吸える心地よさは格別だし、夏を前にして肌荒れの心配が減ったのはとてもありがたい。

 ここ数年は、一年のはじめに「やりたいことリスト」を作るのが個人的きまりになっている。堅苦しい目標ではなく、なるべく不要不急のものを考えるのがミソだ。例えば予定のない休日に、リストに立ち返って消化を試みると、なかなかに充実した時間を過ごせたりする。

 今回は上半期の総括がてら、リストの内容を紹介していこうと思う。

 まず、今年のラインナップは次のようになっている。

 

①旅行

②寝室をかわいくする

③ホールケーキをひとりで一気に食べる

④急須で緑茶を飲む

⑤絵を描く(ツイッターのアイコンを変える)

⑥自転車整備をする

⑦防災の備蓄を見直す

⑧推しグループ以外のライブに行く

⑨宅トレ環境を充実させる

⑩初めてのファッションアイテムを取り入れる

 

 現時点では、①③④⑤⑥⑩の6割達成という状況になっている。例年、年末時点で6割程度なのでかなり好調である。

 春に行った奈良と京都、そして初夏の秩父への旅は、文化財クラフトビールに存分に溺れて、めちゃくちゃ楽しかった。一人旅も友人との旅もそれぞれに満喫でき、幸せな時間だった。

 一人暮らしはもう長いのに急須というものがなく、いただきものの茶葉がキッチンの隅に眠ったままだったが、ハリオの急須を見つけて即決した。ガラス製なので一緒に使う湯呑を選ばないし、食洗機が使えるので手入れが非常に楽なところが気に入っている。

 パソコンを買い替え、クリスタを導入したのでいまは絵を描くリハビリ中だ。自転車は近所のサイクルショップでメンテナンスをし、空気入れも購入したので快適に使うことができるようになった。

 初めてのファッションアイテムとして実際に取り入れたのは指輪である。セットで数千円程度の安価なものの中で、なるべくチープに見えないものを吟味して購入した。手洗いの時に少し面倒なことを除けば、意外なくらい華やかに見えるので素敵だ。

 

 そして今回特に取り上げて書きたいのは、「ホールケーキをひとりで一気に食べる」というお題だ。

 まあるいホールケーキをひとり占め。多くの人が夢見るシチュエーションではないだろうか。ゴールデンウィークの一日を使って、私はこれを実現することに決めた。

 まずはケーキの選定。きっと一生に一度だろうから多少高くてもいいと思い、デパ地下を2周くらいした。決めたのはGRAMERCY NEWYORKのいちごショートケーキ、4号サイズで3,456円だった。(ちなみにケーキの号数は直径を3で割った数字になるので、4号というと直径12センチ程度のものである。)

 つやつやとしたいちごが、真っ白なクリームの上で踊るように乗せられて、金箔もちらり。見ているだけで気分を盛り上げてくれるその姿。これを独占できるのだと思うと高揚感で胸がいっぱいになった。

 大切に抱えて家に持ち帰り、準備にかかる。きっと途中でしょっぱいものも欲しくなるだろうと踏んで、鳥ハムやクラッカー、ミニトマト、玉ねぎのマリネを用意。徹底的に自分を甘やかすためにスパークリングのロゼワインもグラスに注いだ。同時に、なるべく罪悪感を軽くするため、その日は朝食を極力減らしていた。おなかもぺこぺこのお昼過ぎ、万全な体制である。

 写真を撮り、いざ実食。

 思いっきりおおきなひと口目を、ケーキ用ではない通常サイズのフォークでとり、ほおばる。

 おいしい。生クリームがかろやかな甘さで、甘酸っぱいいちごと最高にあう。スポンジのふかふかも最高だ。ぱくぱくと進んでしまうが、普通ならもう自分の分がなくなってしまうよという頃合いでもまだたくさん残っている!

 ロゼワインで幸せをおなかに流し込みながら、あっという間に3分の1まで食べてしまった。これは余裕なのでは?このサイズを楽勝で食べてしまうとしたら、さすがに自分の食欲旺盛すぎてちょっと心配になるな……と思ったのもつかの間。

 半分食べ進めたところで、手が止まった。

 この展開が信じられず愕然とした。静かにフォークを置く。本当に本当においしいのに、あんなにおなかもすいていたのに、急にキャパシティを超えてしまったようだった。

 だがそれも想定内だったので、傍らに控えていたしょっぱいものたちをつまむ。甘味で飽和していた味覚が叩き起こされて返ってきた。そしてまたケーキで口と脳をいっぱいにする。どんなに時間が経過しても、せつないくらいケーキはおいしい。

 急激にペースを落としながらも、何とか完食。かかった時間は1時間8分だった。

 

 とにかく、あの丸ごとを自分だけでという幸福感がたまらなかったし、途中の「まだある!」という喜びも、にまにましてしまうくらいよかった。

 一生に一度でいいと思っていたが、食べ終わってしばらくしてみると、チョコケーキやロールケーキでもやってみたいなあなどと思う自分がいる。あまりにも贅沢な話だと我ながら少し呆れてしまうけれど。

 

 下半期も、リスト残りの4つを消化しながら楽しく過ごしていきたい。こんなケーキの暴食なんてしておきながらも、現在ダイエットの真っ最中なので、できれば宅トレ環境の充実をはかっていきたいが、あまりお金に余裕がないのでヨガマット一つ買おうにも唸ってしまう。

 日常の買い物と同時進行が可能な、防災の備蓄の見直しをしていこうか。ローリングストックや、水の買い足しなど、計画してみようと思う。