その蒼を貫け
蒼穹のファフナーTHE BEYONDが完結した。
私は無印の16話からリアルタイム視聴していた17年弱選手なので、こうしてまたひとつの節目を迎えたことは感慨深い。
既にTwitterでネタバレしながら感想を呟いているのだが、ある程度まとまった文章で気持ちを残したいと思い、ブログをしたためている。
最初に断っておくが、EXODUSからの情報量の多さに全然ついていけてないし、BEYOND自体もろくに咀嚼できていないと思う。あくまで私の個人の感想なので、誤りなどがあっても許してほしい。また、書いているのは3回視聴した後の時点なので、解釈もまた変わるかもしれない。
まずBEYONDを観終えて一番に、
「一騎が予想以上に″人間″として最終話を迎えられて本当に良かったな」
と思った。
もちろん、もはや人間としての存在を超えたエレメントではあるのだけど、最終話にはその佇まいが実に穏やかで、雰囲気は暖かく、「笑顔がやたらと可愛い」一騎がそこにいた。
私はBEYONDで、あまりにもフェストゥムっぽい一騎の立ち振る舞いにかなりショックを受けていた。急に消えるし金色に光るし。それこそ、最終話のこそうしとのバトルで「俺を同化しろ」と言った時、彼は「真壁一騎」ではなく「マークアレス」だったと思う。平敦盛が熊谷二郎直実に追い詰められて「ただ、とくとく首を取れ」と言うような感覚でありながら、まさしくフェストゥムの理論で、「俺を同化しろ」と言っていた。
でも私は、真壁一騎にはあくまでも人間として「死んで」欲しいと思っていた。これまでの経緯からして仕方ないとはいえ、一騎に人間としてそこにいてほしかった。一視聴者としてのエゴだ。
それが、「また命の使い道を考えなきゃ」なんて、穏やかに未来のことを語るようになっていた。死ぬこともいなくなることもなく、生きる姿で、人間らしさを見せて終わってくれた。
これ以上ない結末だと思う。
舞台挨拶で石井真さんが「一騎の結末についてあともう一声、と言う気持ちがある」と仰っていたように、確かに欲がないわけではないが、それでも、あれほど優しく微笑む一騎が見られただけで、充分だ。
「一騎が物語に置いて行かれた」と石井さんは仰った。さすが、的を射ている。
初見で、一騎たち竜宮島の人々が美羽を犠牲にしようとしていることがわかったとき、一騎や剣司たちが恐ろしく見えた。おそらくAlvisは美羽が犠牲になる可能性は非常に高いことはわかっていたものの、島のミールに限りなく近い彼女の意思に歯向かうという発想がないし、これまでのL計画などと同じようにあくまで生き残ることを前提にした作戦だから決行したのだとは思う。私もファフナーはそういうものだと思っていたので、こそうしやマリスの怒りに共感・同調してしまった瞬間、頬をぶっ叩かれたような気がした。島が大好きなはずなのに、島の意見に賛同できないことが悲しかった。
でも、こそうしが一騎を越えて行ってくれたことで、従来の島の価値観自体が打ち破られて、悲しみも昇華してくれたように思う。こそうしには感謝が尽きない。
一騎が置いて行かれる、越えて行かれることこそBEYONDの核心。まさに一騎はファフナーという物語そのものだった。
こそうしが主人公になったことにちょっとした嫉妬を抱いていたのもあり、最終話まで見た時の一騎の描かれ方が腑に落ちたことでそういう点でも救われた。
こそうしと一騎が大喧嘩している中で、一騎に総士の囁きが聞こえる。あれはきっと、一騎と共鳴した総士の思念なんだと思う。ミョルニアの中で真壁紅音が共鳴し続けていたのと同じように、一騎の中に総士がいる。
その導きで、一騎はこそうしと戦って負けた。全力で倒しに来たこそうしを真正面から受け止めた。ある意味、こそうしは一騎と総士のふたりに勝ったと言ってもいいのではと思う。「僕は真壁一騎(と皆城総士)に勝ったんだぞ!」と一生言い続けてて欲しい。かわいいから。(彼にとって皆城総士は自分のこと以外に認められないので、あくまで比喩的な話だが)
一騎は総士の心と共にあるからこそ、あれほど穏やかに灯籠を受け取ることができたのではないかと思う。あの笑顔、器屋に帰ってきたときにも湛えていたけど、お母さんにそっくりで本当にかわいい。
祭りの夜に一騎と真矢が会話するシーンは、あまりの真矢のいじらしさに見るたび涙を禁じ得ない。
あれでこそ遠見真矢である。彼女の恋心を思うと切ないが、どうしようもなく、彼女らしさを全うしてしまっている。
そして、あれでこそ真壁一騎である。絶対あんまり深く考えてない。もしかして真矢も自分と同じで、外の世界を見たいと思ったりするんじゃないか、みたいな。気を利かせたつもりなんだと思う。一騎め。
コミカライズ9巻収録の短編AAAを踏まえた上で改めてあのシーンを観ると、真矢が楽園側で待っていてくれる(2人の間に川が流れている)のが、なんとも象徴的で唸らされた。
一騎と甲洋は旅立ちの朝、ファフナーに乗って島の上空を飛び交う。
島の景色に機体の影が走って、空気を震わせるあのシーン、ファフナーならではの珠玉の名場面だと思う。
懐かしい風景、青空、ミール…大気…機体そのものが映らないからこそ、守護神たる存在を強く感じる。
あの崖で、こそうしは一騎に何と言ったのか…
正解を知ることはきっとないけど、3回目を見終わった段階での私の想像は
「反省したら、帰ってこい」
である。
マリスに放ったのと同じ言葉。
こそうしはきっと、一騎が世界を見てくるのを、大馬鹿者が修行に出るような意味合いと捉えて送り出すんじゃないかと思ったのだ。
自分が偽りの夢から醒めようとしたように。
やはりファフナーは、対話してこそ味わい深くなる。
今回も友人たちと語り合って新たな視点をもったり、自分の思いを見つめたりすることができた。
そうして気づいたことがある。
私って実はものすごく、こそうしが好きだ。
あの快活さ、不器用さ。いつまでもそのままでいて欲しい。幸せでいてほしい。
また会いたい。必ず。