ろこのかたこと

たまに役者をやる会社員の日常

小指の先まで使って

 この文章を打ち始めるのに、パソコンを起動してwordを開くまで、たっぷり30分かかった。

 私のノートパソコンは普段ほとんど活躍の場はなく、iPhoneにCDのデータを取り込んだり、写真データのバックアップを取ったりといった作業にしか用いられない。もはや化石に近く、まるで腰の曲がったおばあちゃんの歩みのように、立ち上がりが信じられないほど遅い。

 それでもこうして腰を据えて、キーボードを使って文章を綴りたいと思うほどに、私の頭の中には今、様々な感情や思考が渦巻いている。ここ最近、溜まりに溜まっている。

 片手で打てる程度の量ではないのだ。フリックより早く、どうにか言葉にしたい。

 とはいえ、なにか歴史を揺るがす大きな事件がおきたとか、そういうことでもない。いや、昨今の世間の騒ぎはまさしくそうなのだが、そんな中でも私が書こうとしているのはもっとミクロなことだ。

日々の出来事や思うことを、書いて整理したい。要するに、日記を書きたい。

 これから私がこのブログに書くのは、ある女の、ごくありふれた日常である。もしかしたら共感してもらえるかもしれないし、逆に疎ましかったりするかもしれない。あなたの心を波立たせるかもしれないし、頬を撫でたことすら気づかれずに終わるかも。ただ、傷つけたくて書くつもりはないことだけは確かなので、何か不快に思われたら、そっと忘れてほしい。ごめんなさい。

 我ながら無責任な免罪符だ。呆れたものだ。

 見てもらいたいような、誰にも触れられたくないような、そんな複雑な気持ちを瓶に詰めて、海へ流す。

 

 まず書いておくべきこととしては、私自身の人物像だろう。と思ったが、書き始めてみてなんだかこそばゆくなったのでやめておく。

 きっと滲み出てくるだろうと思う。なんか、文章の端々から、そういうのは。

 滑り出しこそ堅めの言葉を選んだが、今後はもっと砕けた表現で綴っていくだろう。とっつきにくい文章は趣味ではないのだ。

 

 手始めに、今日の私の一日をなぞってみる。

 朝はゆっくりと目が覚めた。たとえ土日であっても7時頃には起き上がるのが常なのだが、今朝はどうにも気が向かなかった。

 目を覚ましたのは8時頃。身体を起こしたのは11時頃だった。

 前日の夜に泣きながら酒を飲んだのが祟ったようだ。低気圧も体に重くのしかかる。ひたすらに怠い。

 とはいえずっとベッドに横たわったきりなのも性に合わず、昼食がてら出掛けることにした。無性にラーメンが食べたくなり、普段は横を通り過ぎるだけの近所のラーメン屋へ向かう。店は狭いが、しっかりと感染症対策を行っており、長居をしなければ問題ないように思われた。看板メニューの塩ラーメンの食券を購入し、席が空くのを待つ。少しソワソワする。

 カウンターの準備が整い、席へ通された。ラジオを聴いてぼんやりとしている間に、ほどなくして差し出された一杯は、それはそれは美味しかった。

 コシのあるちぢれ麺に、さっぱりとしていながらも深みのある出汁。鶏のチャーシューは素朴だがしっとりとして旨い。味玉もとろりと麺に絡む。感動とともに味わい、汁を飲むころにはすっかりファンになっていた。透明なフィルム越しに店主へ、ごちそうさま、と半ば遠慮がちに声をかける。おいしかったと一言二言伝えたい気もしたが、あまりしゃべりすぎるのも憚られた。

そのあとは美容院に行った。鏡に向かって気づいたが、案の定、下したばかりのワンピースに汁が飛んでいた。

 

 さあ、こんな調子で、日ごろ思うことやなんてことない出来事を文章にしていこうと思う。

 私としてはとにかく書き連ねることが目的なので、面白みはないかもしれないが、気が向いた方はお付き合いいただけたら幸いである。

 個人的にはこういうあんまり中身のない文章でも読んでしまう。昔から配られたばかりの国語の教科書も、牛乳パックの成分表も、バズってるツイートにぶら下がってるリプライも、何でも読んでしまうような、見境ない活字中毒なのだ。